自治会DXとは何か 第21回

町内会・自治会の仕事を、次の人に残せる形に変えること

▶︎第20回「Copilotは自治会の会計・資料作成に使えるか」

「自治会DX」という言葉を聞くと、少し大げさに感じるかもしれません。

DX、デジタルトランスフォーメーション。
横文字で言われると、パソコンに強い人や、行政の専門部署が取り組むもののように思えます。

しかし、私が自治会活動を経験して感じる自治会DXは、もっと身近なものです。

難しいシステムを入れることではありません。
すべてをスマホやアプリに置き換えることでもありません。
まして、高齢の役員や住民を置き去りにすることでもありません。

自治会DXとは、ひと言でいえば、自治会の仕事を、次の人が困らない形に整えることです。

資料を探しやすくする。
毎年同じ文書を一から作らなくて済むようにする。
会計や予算の流れを見えるようにする。
行事の準備を、担当者の記憶だけに頼らないようにする。
そして、役員交代のたびに「また最初からやり直し」にならない自治会をつくる。

これが、私の考える自治会DXの出発点です。


自治会の仕事は、思っている以上に多い

自治会の仕事は、外から見るよりずっと多岐にわたります。

回覧文書の作成、役員会資料、総会資料、会計処理、予算案、行事計画、敬老会、祭り、防災、清掃活動、各種申請、公民館や行政との連絡。

一つひとつは小さな仕事に見えても、年間を通すとかなりの量になります。

しかも、自治会は会社ではありません。
専任職員がいるわけではなく、多くの場合、地域の住民が仕事や家庭の合間を縫って担当しています。

そのため、どうしても次のような問題が起きます。

「あの資料はどこにあるのか」
「去年はどうやっていたのか」
「前任者に聞かないと分からない」
「同じ文書を毎年作り直している」
「会計の比較がすぐにできない」
「役員が変わると、やり方も変わってしまう」

これは、自治会の人が悪いのではありません。
仕組みが整っていないだけです。

自治会DXは、この「人の頑張りに頼りすぎている状態」を少しずつ変えていく取り組みです。


DXは「デジタル化」と同じではない

ここで大事なのは、DXと単なるデジタル化は少し違うということです。

デジタル化とは、紙の資料をPDFにする、Excelで表を作る、LINEで連絡する、といったことです。
もちろん、これだけでも便利になります。

しかし、DXはもう一歩先にあります。

単に紙をデータにするだけでなく、仕事の進め方そのものを見直すことです。

たとえば、昨年の総会資料をPDFで保存するだけならデジタル化です。
そこからさらに、毎年使う書式をテンプレート化し、担当者が変わっても同じ品質で資料を作れるようにする。
ここまで進むと、自治会DXに近づきます。

回覧板を電子化するだけならデジタル化です。
しかし、誰に何を、いつ、どのように伝えるかを整理し、紙が必要な人には紙で、スマホで見られる人にはスマホで届ける。
こうした「住民に合わせた情報の届け方」まで考えると、DXになります。

国や自治体でも、AIやデジタル技術を活用して社会全体のデジタル化を進める方向が示されています。デジタル庁の重点計画でも、AI・デジタル技術の活用や安全・安心なデジタル社会づくりが柱として掲げられています。

また、横浜市では自治会町内会向けに、情報発信や回覧、安否確認などを支援するデジタルツールを紹介する「自治会町内会DX応援事業」が行われています。 東京都でも、町会・自治会のデジタル化を後押しする助成事業が実施されています。

つまり、自治会DXは一部の先進的な団体だけの話ではなく、これから多くの地域で必要になるテーマなのです。


自治会DXで最初にやるべきこと

では、自治会DXは何から始めればよいのでしょうか。

私は、いきなり大きなシステムを入れる必要はないと思っています。

最初にやるべきことは、次の三つです。

第一に、資料を整理すること。
第二に、毎年くり返す仕事を見える化すること。
第三に、次の役員が使える形で残すこと。

この三つだけでも、自治会の負担はかなり変わります。

たとえば、Googleドライブのようなクラウドに、年度ごとのフォルダを作ります。
「総会」「会計」「行事」「防災」「回覧」「公民館関係」など、誰が見ても分かる分類にします。

次に、毎年使う資料はテンプレートにします。
総会議案書、予算案、決算報告、行事案内、回覧文書、役員名簿、引き継ぎ書。
これらを一から作るのではなく、前年のものを土台にして修正できるようにします。

そして、行事が終わったら、反省点や改善点を短く残します。

「テントは何張必要だったか」
「受付は何人必要だったか」
「来賓案内で困ったことは何か」
「来年は何を変えた方がよいか」

こうした小さな記録が、次の担当者を助けます。

自治会DXとは、立派な機械を入れることではなく、こうした地味な作業を積み重ねて、自治会の仕事を「残る仕事」に変えることです。


AIは自治会DXの強い味方になる

ここで、AIの出番があります。

自治会の仕事には、文章を作る、整理する、比較する、要約する、説明文を作る、といった作業がたくさんあります。
これは、AIが得意とする分野です。

たとえば、ChatGPTを使えば、回覧文書のたたき台を作れます。
役員会の案内文を整えられます。
総会資料の説明文を分かりやすくできます。
行事の反省メモから、来年度への改善案をまとめることもできます。

NotebookLMのような資料整理に強いAIを使えば、過去の自治会資料を読み込ませて、必要な情報を探しやすくすることも考えられます。

Copilotを使えば、WordやExcelで作る会計資料、予算表、報告書の作成補助にも役立つ可能性があります。

もちろん、AIにすべてを任せるわけではありません。
自治会の判断、地域の事情、人間関係、住民への配慮は、最後は人が決めるべきです。

しかし、文章の下書き、資料の整理、比較表の作成、説明文の改善などは、AIに手伝ってもらえます。

これまで一人で抱えていた作業を、AIと分担する。
これが、これからの自治会運営では大きな意味を持つと思います。


自治会DXは、高齢者を切り捨てるものではない

自治会DXの話をすると、必ず出てくる不安があります。

「高齢者には無理ではないか」
「スマホを使えない人はどうするのか」
「紙の回覧板をなくすのか」

これは、非常に大事な視点です。

自治会DXは、高齢者を切り捨てるためのものではありません。
むしろ、高齢者が多い地域だからこそ、無理のない形で進める必要があります。

紙が必要な人には、紙で届ければよい。
スマホで見られる人には、スマホでも届ければよい。
役員の中でパソコンが得意な人がいれば、その人だけに負担を集中させず、作業を分担できる仕組みにすればよい。

大切なのは、いきなり全部を変えないことです。

紙とデジタルを併用する。
できるところから始める。
使える人から使う。
困る人が出ないようにする。

これが、地域に合った自治会DXです。


自治会DXの本当の目的

自治会DXの本当の目的は、効率化だけではありません。

もちろん、資料作成が楽になることは大切です。
会計処理が分かりやすくなることも大切です。
回覧や連絡が早くなることも大切です。

しかし、それだけではありません。

本当の目的は、自治会を続けやすくすることです。

役員の負担が重すぎると、次のなり手が見つかりません。
引き継ぎが難しすぎると、新しい役員は不安になります。
資料が残っていないと、毎年同じ失敗を繰り返します。

自治会DXは、こうした問題を少しずつ減らすためのものです。

「前任者しか分からない自治会」から、
「資料を見れば分かる自治会」へ。

「毎年ゼロから始める自治会」から、
「前年の知恵を引き継げる自治会」へ。

「一部の人が無理をする自治会」から、
「みんなで分担できる自治会」へ。

この変化こそが、自治会DXの核心だと思います。


私が自治会DXにこだわる理由

私は、長年の仕事の経験と、自治会活動の経験を通じて、組織は「人の頑張り」だけでは長続きしないと感じてきました。

もちろん、地域には熱心な人がいます。
責任感のある人もいます。
黙って支えてくれる人もいます。

しかし、その人たちの努力だけに頼っていると、いつか限界が来ます。

自治会は、会社のように人を採用できるわけではありません。
役員は毎年変わります。
高齢化も進みます。
仕事を持ちながら、家庭を持ちながら、地域活動に参加する人も増えています。

だからこそ、これからの自治会には「仕組み」が必要です。

資料が残る仕組み。
作業を分担できる仕組み。
過去の経験を活かせる仕組み。
新しい役員が不安なく入れる仕組み。

その仕組みづくりに、デジタルとAIは大きく役立ちます。


まとめ:自治会DXは、地域を守るための準備である

自治会DXとは、難しい言葉ではありません。

自治会の仕事を整理し、次の人が困らないように残し、地域活動を続けやすくする取り組みです。

紙をなくすことが目的ではありません。
スマホを使わせることが目的でもありません。
最新システムを導入することが目的でもありません。

目的は、地域の活動を無理なく続けることです。

自治会は、地域の暮らしを支える大切な仕組みです。
防災、見守り、行事、交流、清掃、助け合い。
これらは、行政だけでは担いきれない地域の力です。

だからこそ、自治会の仕事を少しでも分かりやすく、引き継ぎやすく、続けやすくしていく必要があります。

そのための第一歩が、自治会DXです。

73歳からAIを学び始めた私にとって、自治会DXは単なる技術の話ではありません。
これまで地域で積み重ねてきた経験を、次の世代に残すための方法です。

自治会DXは、未来の自治会を助けるための、今からできる準備なのです。

まとめ:Copilotは自治会事務の「仕上げ役」として使える

Copilotは、自治会の会計や資料作成に使えます。

ただし、会計を自動で正しく処理してくれる万能AIではありません。

自治会でのCopilotの役割は、次のように考えるとよいでしょう。

Wordでは、案内文や報告書の下書きを作る。
Excelでは、会計表の説明や増減理由を整理する。
PowerPointでは、提案資料や説明資料を作る。
Outlookでは、連絡文やメール文面を整える。

つまりCopilotは、自治会の仕事を丸ごと代行するAIではなく、資料をわかりやすく整える事務補助員です。

自治会の会計で一番大切なのは、正確性と信頼性です。
そこは人間が責任を持つ必要があります。

しかし、数字を説明する文章、住民に伝える資料、役員に引き継ぐ文書。
この部分は、Copilotの力を借りる価値があります。

自治会の仕事は、これからますます担い手不足になります。
だからこそ、AIを使って、できるところから負担を減らすことが大切です。

Copilotは、そのための有力な道具の一つです。

自治会の会計と資料作成を、少しでも楽に、少しでもわかりやすくする。
その第一歩として、Copilotは十分に試す価値があります。

▶︎第22回「自治会活動にAIを使うと何が変わるのか」

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