自治会の仕事は、Slackで変わるのだろうか

― 紙の会議資料を「探せる情報」に。AI時代の新しい仕事の進め方を考える

はじめに ― あの資料は、どこにあっただろうか

自治会では、会議のたびに多くの資料が配布されます。

市からのお知らせ、地域行事の計画、防災関係の資料、会議の報告書など、その内容は多岐にわたります。

こうした資料は、地域活動を支える大切な情報です。しかし、配布された資料を後から確認しようとすると、意外に手間がかかります。

「あの説明は、いつの会議資料に載っていただろうか」

「昨年のふるさとまつりでは、どのような準備をしたのだろうか」

「以前の防災訓練の資料を、もう一度確認したい」

紙の資料が増えるにつれ、必要な情報を探すことは難しくなります。

また、自治会では役員が交代します。過去の活動記録や判断の経緯を、次の役員に引き継ぐことも重要な課題です。

こうした不便さを、デジタル技術によって改善することはできないでしょうか。

今回注目したいのが、ビジネスチャットツールの Slack(スラック) です。

Slackを活用すれば、従来の紙を中心とした情報共有を、必要なときに検索・閲覧できる仕組みへと変えられる可能性があります。

さらに、実際に使い始めてみると、AI時代の新しい仕事の進め方についても興味深いことが見えてきました。

今回は自治会DXの視点から、Slackの利便性、仕事への活用、導入にあたっての課題を考えてみたいと思います。


1.Slackとは何か。LINEとの違いは?

Slackは、企業や組織の情報共有、共同作業を支援するサービスです。

メッセージのやり取りに加え、資料の共有、過去の情報の検索、作業の進捗確認などに利用できます。

LINEも日常の連絡手段として大変便利です。自治会でも、役員同士の連絡や日程調整に活用しているところがあるでしょう。

では、Slackにはどのような特徴があるのでしょうか。

話題ごとに情報を整理できる

Slackには「チャンネル」という機能があります。チャンネルとは、話題や活動ごとに設ける情報共有の場所です。

例えば、自治会では次のように整理できます。

チャンネル共有する情報
区長会議開催案内、会議資料、報告
公民館からのお知らせ地域活動、施設利用、行事案内
防災・防犯防災訓練、避難、防犯関係
ふるさとまつり準備計画、役割分担、進捗
自治会運営役員間の相談、活動記録

情報を分類することで、話題の異なる連絡が混在することを減らせます。

また、一つの連絡に対する質問や回答を「スレッド」という形でまとめることもできます。

例えば、会議の開催案内に対する質問を、その案内の下に集めることができます。

LINEとSlackは競争するものではない

LINEにもグループやノート、検索などの機能があります。

したがって、LINEが古く、Slackが新しいから優れているという話ではありません。

気軽な連絡にはLINE、組織の情報整理や共同作業にはSlackというように、目的に合わせた使い分けが考えられます。

Slackの特徴は、連絡するだけでなく、連絡された情報を整理し、後から仕事に利用しやすいことにあります。

2.企業ではビジネスチャットの活用が広がっている

Slackのようなサービスは、実際の企業でどの程度活用されているのでしょうか。

矢野経済研究所が2025年2月に発表した調査によると、国内のビジネスチャットツール市場は、2023年度に約367億円、2024年度には約403億円になると見込まれていました。

2024年度は、前年度比約10%の成長が見込まれていたことになります。

これはSlackだけの数字ではなく、ビジネスチャット市場全体のものです。また、2024年度は当時の見込値です。

それでも、企業でチャットを仕事に利用する市場が拡大していることは読み取れます。

同調査では、外部サービスとの連携や生成AIの取り込みが進み、ビジネスチャットが業務を支えるプラットフォームへ発展していることも指摘されています。

以前は、チャットといえば連絡や相談のための道具という印象が強かったかもしれません。

しかし現在は、情報共有に加えて、業務アプリやAIとつながる仕事の基盤としても発展しています。

Slackは、そうした主要なサービスの一つです。

ただし、これらの数字だけで、Slack単独の利用組織数が急増していると断定することはできません。

注目したいのは、企業で利用されている情報共有や共同作業の仕組みを、地域活動にも応用できるのではないかということです。

3.紙の会議資料を「配る情報」から「活用する情報」へ

私が自治会でSlackの利用を検討したいと思った最大の理由は、情報の検索機能です。

会議資料は、配布した後も使えるはず

これまでの会議資料は、紙で配布され、各自が保管する方法が中心でした。

しかし、数か月前の資料ならともかく、昨年や一昨年の資料を探すとなると、かなりの手間がかかる場合があります。

もし、会議で配布した資料を電子ファイルとしてSlackにも共有しておけば、どうでしょうか。

例えば、「防災訓練」というキーワードを入力すると、検索可能な範囲にある関連投稿や共有資料を探せます。

「ふるさとまつり」で検索すれば、過去の準備に関する連絡や資料を見つけられる可能性があります。

スマートフォンやパソコンから利用できるため、会議の場にいなくても情報を確認できます。

【操作例】「防災訓練」の資料を探す

操作は、基本的には次の3段階です。

  1. Slackの画面上部にある検索欄をクリックする。
  2. 「防災訓練」と入力して検索する。
  3. 表示された投稿や添付ファイルから、必要な資料を選んで確認する。

初めての方でも、この操作を一度体験すると、Slackの便利さを理解しやすくなると思います。

ただし、検索できるのは、自分に閲覧権限があり、利用プランの保存・表示対象となっている情報です。

資料の名前や日付をそろえることも重要

Slackに資料を入れれば、何でも簡単に探せるわけではありません。

例えば、紙をスキャンして作ったPDFは、文字が認識されていなければ、本文を検索できない場合があります。

そのため、資料を投稿するときには、次のような説明を付けると探しやすくなります。

「2026年11月・区長会議の防災訓練実施計画です。集合場所、時間、担当分担を掲載しています。」

件名、日付、資料の内容などを統一して記載することも、情報を使いやすくする工夫の一つです。

また、古い資料を利用する際には、改訂された最新版がないかを確認することも必要です。

ここで目指しているのは、単なるペーパーレス化ではありません。

一度配布した資料を、その場限りで終わらせず、必要なときに探して再び活用できる仕組みを作ること。

それが自治会の情報管理を改善する大切な一歩になると思います。

4.地域行事の準備にもSlackを活用できるのではないか

自治会の仕事は、会議資料の管理だけではありません。

地域行事の準備も、重要な仕事の一つです。

例えば、ふるさとまつりを考えてみましょう。

会場設営、テントや音響設備の手配、出演団体との調整、広報チラシの作成、当日の役割分担など、さまざまな仕事があります。

準備を進めるなかでは、誰が何を担当しているのか、どの仕事が完了したのか、何が残っているのかを確認する必要があります。

電話やメール、紙の資料などで個別に管理していると、全体の進捗状況を把握するのに時間がかかることがあります。

Slackで行事専用チャンネルを作れば、準備に関する連絡や資料を一か所に集められます。

さらに、仕事の担当者や進捗状況を管理する仕組みと組み合わせることで、行事全体の状況を把握しやすくなります。

【参考】タスク管理をするには、どうすればよいか

例えば、次のような管理表を作ることが考えられます。

仕事担当状況
テントの手配会場担当完了
音響設備の確認設備担当作業中
広報チラシの作成広報担当未着手
当日の役割分担実行委員会作業中

方法は大きく二つ考えられます。

方法① Slackのリスト機能を使う

Slackの有料プランでは、タスクやプロジェクトを整理する「リスト」という機能を利用できます。

仕事ごとに担当者、進捗、期限などを設定し、関係者で確認する方法です。

方法② Google スプレッドシートなどを併用する

外部の表計算サービスで管理表を作り、そのリンクをSlackのチャンネルで共有する方法です。

表を更新すれば、関係者は適切な閲覧権限のもとで、最新の進捗状況を確認できます。

最初から高度な自動化をする必要はありません。

まずは行事専用チャンネルを作り、連絡と資料を集める。その後、必要に応じて管理表やAIとの連携を考える。

この順序が現実的ではないでしょうか。

5.Slackは、AI時代の仕事の司令塔になる可能性がある

私がSlackを使ってみて、もう一つ興味を持ったのは、これからの仕事の進め方との関係です。

これまで私たちは、連絡にはメール、文書作成にはWord、データ集計にはExcel、資料保存には別のサービスというように、さまざまなアプリを使い分けてきました。

Slackは、こうした仕事に関する連絡や情報を一つの場所に集約する「司令塔」のような役割を果たせます。

また、SlackにはAIによる会話の要約などの機能があり、外部の生成AIサービスや業務アプリとも連携できます。

その先には、これまでとは異なる仕事の進め方が考えられます。

AIと人間の役割分担

例えば、将来の地域行事の準備を想像してみます。

人間が行事の目的や実施計画を示す。

AIや連携したアプリが、必要な情報の整理、進捗表の更新、報告資料の下書きなどを支援する。

担当者は、Slackで共有された成果物を確認する。

そして、内容の修正や最終判断を人間が行う。

こうした流れです。

もちろん、Slack単体ですべてのデータ処理や資料作成ができるわけではありません。

AI機能は利用プランによって異なり、外部アプリとの連携や適切な設定も必要になります。

また、AIが作成した資料の内容が正しいとは限りません。特に行政情報や個人情報を扱う場合には、人間による確認が欠かせません。

それでも、人間が目的を考え、AIが作業を支援し、人間が成果物を確認して判断する。

こうした仕事の進め方は、AI時代における重要な変化の一つになると感じています。

Slackを学ぶことは、一つのアプリの使い方を覚えるだけではなく、これからの仕事の仕組みを考える機会にもなるのではないでしょうか。

6.便利な道具でも、使いこなすには時間が必要

ここまでSlackの可能性について述べてきましたが、実際に使い始めてみると、決して簡単なことばかりではありません。

画面には、チャンネル、ダイレクトメッセージ、ファイル、通知、アクティビティなど、多くの機能が表示されます。

初めて使う人にとっては、何をどこから操作すればよいのか、戸惑うこともあると思います。

私自身も、現在操作を学んでいるところです。

しかし、LINEも初めて使った頃は、慣れるまで時間が必要だったのではないでしょうか。

今では多くの人が、日常の連絡手段として利用しています。

Slackは組織の情報管理や共同作業に関する機能が豊富なため、LINE以上に覚えることが多いかもしれません。

だからこそ、最初からすべての機能を使おうとする必要はありません。

まずは三つの操作から始めればよいと思います。

  • 届いた連絡を読む
  • 共有された会議資料を開く
  • 必要な情報をキーワードで探す

この三つができるだけでも、Slackの便利さを体験できるのではないでしょうか。

今後、AIやデジタル技術を利用する機会が増えるなかで、新しい道具を少しずつ学び、使い慣れていくことには意味があると思います。

7.すべての人にデジタル化を求める必要はない

自治会には、さまざまな年代の人が参加しています。

スマートフォンやパソコンを日常的に利用している人もいれば、操作に慣れていない人もいます。

したがって、Slackを導入したからといって、すべての人に利用を求める必要はありません。

紙の資料との併用から始める

会議では従来通り紙の資料を配布する。

その一方で、希望する人がSlackでも資料を確認できるようにする。

こうした併用から始めれば、デジタル機器を利用しない人が不便になることを避けられます。

また、公民館などで操作説明会を開催し、実際の画面を見ながら使い方を学ぶ機会を設けることも考えられます。

ただし、紙と電子の資料を併用する場合には、訂正された情報が双方に正しく届く仕組みも必要です。

デジタル化は、使える人だけが便利になるためのものではありません。

できるだけ多くの人が、無理なく情報を利用できる環境を作ることが大切です。

8.導入前に確認しておきたい課題

Slackの便利さを考える一方で、実際の運用には検討すべきことがあります。

公民館の作業負担を増やさない工夫

Slackに資料を掲載する場合、これまでの印刷や配布に加え、新たな作業が発生する可能性があります。

既存の電子資料をそのまま利用する、掲載担当者を決める、資料の形式や名前を統一するなど、負担を増やさない工夫が必要です。

公民館と自治会の双方にとって便利になる仕組みでなければ、継続は難しいでしょう。

行政資料を掲載できるか

市などから提供される資料を、Slackのような外部クラウドサービスに掲載してよいかについても確認が必要です。

公開可能な資料と、個人情報や内部向け情報を含む資料では、取り扱いが異なります。

掲載できる情報の範囲、閲覧権限、管理責任などを関係部署と協議する必要があります。

無料プランでは、過去の情報を長期保存できない

Slackには無料プランがありますが、重要な制限があります。

無料プランで閲覧・検索できるメッセージとファイルは、原則として直近90日間に限られます。

また、1年以上経過したデータは削除されます。保存設定によっては90日後に削除される場合もあります。

自治会では、昨年の活動記録や数年前の会議資料を確認したいこともあります。

そのため、無料プランだけを長期的な資料保管の仕組みとして利用することには限界があります。

有料プランの利用や、別の資料保存サービスとの組み合わせを考える必要があります。

Slackを日常の情報共有・検索の入口として活用し、正式な記録は別の適切な場所に保存する。

こうした役割分担も有力な選択肢になると思います。

9.まずは小さく試し、効果を確かめる

自治会全体にSlackを一斉導入する必要はないでしょう。

まずは希望する役員など、少人数で試験的に利用することから始める方法が考えられます。

例えば、公開可能な行事案内や練習用の資料を共有し、実際に検索してみる。

そのうえで、次の点を確認します。

  • 初めて使う人でも資料を開けるか
  • 必要な情報を検索で見つけられるか
  • 行事の準備状況を共有しやすくなるか
  • 資料の掲載にどの程度時間がかかるか
  • 利用費用や管理負担に見合う効果があるか

大切なのは、Slackを導入したという事実ではなく、実際の不便さがどの程度改善されたかということです。

導入前と導入後で、資料を探す時間や作業負担を比較できれば、より具体的に効果を評価できます。

その結果をもとに、継続するか、改善するか、別の方法を選ぶかを判断する。

これが自治会DXを進める現実的な方法ではないでしょうか。

10.実際に使って学べる操作マニュアルを作成しました

今回、Slackを初めて利用する自治会役員や公民館関係者のために、**『自治会DXのためのSlack操作マニュアル』**を作成しました。

全18ページの入門資料です。

実際のSlack画面を使い、操作する場所を番号や矢印で示しています。

また、説明用の図や自治会での具体例を取り入れ、初めて利用する人でも基本操作を学べるようにしました。

【無料PDF】自治会DXのためのSlack操作マニュアル

全18ページ/2026年11月2日版

このマニュアルは、最初からすべてを読む必要はありません。目的に応じて必要なページを開いてください。

やりたいこと見るページ
SlackとLINEの違いを知りたい3ページ
Slackの画面の見方を知りたい4ページ
ワークスペースに参加したい5ページ
連絡を読んだり投稿したい6~7ページ
会議資料のPDFを共有したい8~9ページ
過去の資料を検索したい10~11ページ
スマホで使いたい12~13ページ
Botや表示の問題を確認したい14~15ページ
自治会での導入を検討したい16~17ページ

特におすすめしたいのは、**10~11ページの「過去の連絡や資料の検索」**です。

Slackの便利さを実感するには、実際にキーワードを入力し、必要な資料を探してみることが分かりやすいと思います。

【初めて使う方へ】三つの操作を試してみましょう

練習① 会議資料を開く

マニュアルの6ページを参考にチャンネルを開き、8~9ページの説明を見ながら、共有された練習用PDFを確認します。

練習② 資料を検索する

10~11ページを参考に、「防災訓練」と入力し、関係する投稿や練習用資料を探します。

練習③ 投稿に返信する

7ページを参考に、会議の案内に対して「資料を確認しました」と返信してみます。

この三つを体験するだけでも、Slackの基本的な使い方を理解するきっかけになると思います。

また、マニュアルの17ページには、30分程度の操作説明会で使用できる練習内容も掲載しています。

自治会や地域活動でSlackの利用を検討する際の参考資料として、ご活用いただければ幸いです。

※本資料はSlack公式ヘルプを参考にOGURA AI Labが独自編集した非公式教材です。アプリの画面や利用できる機能は、利用プランや設定などによって異なる場合があります。

おわりに ― 自治会DXは、仕事の進め方を見直すことから

今回Slackを調べ、実際に使い始めてみて、自治会の情報共有や資料管理を改善する可能性を感じました。

会議資料を電子的に共有する。

必要な情報をキーワードで検索する。

地域行事の準備状況を関係者で確認する。

こうしたことは、一つひとつは小さな改善かもしれません。

しかし、その積み重ねが、自治会の仕事を進めやすくしていくのではないでしょうか。

さらに、AIや外部アプリとの連携が進めば、情報の整理や資料作成など、これまで人間が時間をかけて行っていた仕事を支援できる可能性もあります。

もちろん、何でもAIに任せればよいということではありません。

人間が目的を考え、AIの支援を受け、その成果を確認して判断する。

この考え方は、これからの仕事や地域活動において、ますます重要になると思います。

自治会DXは、難しい技術を導入することだけではありません。

これまで当たり前に行ってきた仕事を見直し、より便利で、負担の少ない方法を探していくこと。

そのために、まず小さく試し、効果を確かめ、改善を重ねていく。

Slackがその有効な選択肢になるかどうか、これからも学びながら考えていきたいと思います。

OGURA AI Lab|自治会DX研究室


参考資料・出典

  • 矢野経済研究所「ビジネスチャットツール市場に関する調査」(2025年2月5日)
  • Slack公式「Slackのプランと機能」
  • Slack公式「無料ワークスペースにおける使用制限」
  • Slack公式「Slackのリスト機能」
  • OGURA AI Lab『自治会DXのためのSlack操作マニュアル』(2026年11月2日版)

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