――3年間の区長経験から考える、自治会の役割・住民情報・行政との新しい関係
※本稿の体験談は筆者の在任当時の経験であり、現在の市全体の運用を示すものではない。制度・施策は2026年10月19日に公式資料で確認した。
はじめに|AI時代に、自治会はどう変わるのか
毎日のように、生成AIの進化に関するニュースが報じられている。
AIは仕事の進め方を変え、組織運営を変え、私たちの暮らしにも大きな影響を与え始めている。
こうした変化に接しながら、私は一つのことを考えている。
これからの自治会は、AIによってどのように変わることができるのだろうか。
私は3年間、地域の区長を務めた。
その間、行政や公民館、地区のさまざまな活動団体と関わりながら、地域の環境美化、防犯、防災、健康づくり、住民交流などに取り組んできた。
年頭には活動方針を示し、地域の課題を考え、少しでも住みよい町にしたいという思いで自治会の運営に携わってきた。
しかし、区長の役割を終えた今、振り返ってみると、十分に実現できなかったことがある。
それは、地域の実態を客観的な情報によって把握し、住民の課題や期待に基づいた自治会運営を行うことだった。
地域を知るための情報が足りなかった
町の人口はどのように変化しているのか。
年齢構成や世帯構成はどうなっているのか。
地域活動に参加していない住民は、どのようなことを望んでいるのか。
こうした情報を十分に把握できないまま、一般的な社会動向や経験を参考に、地域の課題を考えなければならなかった。
もちろん、役員や住民と相談しながら活動を進めることはできる。
しかし、地域の実情を示す情報が整っていれば、もっと的確な課題形成ができたのではないか。
その思いは、今も残っている。
私は、生成AIの活用が急速に広がっている現在を、自治会の仕事と組織運営を見直す好機だと考えている。
ただし、AIを導入すれば自治会の問題が解決するという話ではない。
むしろ、その前に確認しなければならないことがある。
自治会は何を担い、何に責任を持ち、どこまでを自らの活動範囲とするのか。
そして、その役割を果たすために、どのような情報と組織体制が必要なのか。
自治会DXは、そこから考え始めるべきではないだろうか。
1.自治会の仕事は、私たちが考える以上に幅広い
行事だけではない自治会の役割
自治会の活動というと、祭りや運動会、敬老行事、環境美化活動などが思い浮かぶ。
しかし、実際に区長を経験すると、その仕事は想像以上に幅広い。
市の広報紙や回覧文書の配布。
ごみステーションの管理に関する調整。
道路や公園の環境美化への協力。
防犯灯や防犯カメラに関する地域の要望への対応。
防災活動、住民交流、各種行事の準備と運営。
さらに、民生委員、青少年育成、社会体育、生涯学習、環境、防犯など、地域を支える多くの活動団体との関わりもある。
自治会は、住民の自主的な組織である一方、行政が地域に密着した仕事を進めるうえでも重要な協力先となっている。
区長の役割と責任は、どこまで明確なのか
伊勢崎市行政区条例第4条では、行政区の所掌事務として、広報紙などの配布、調査書・報告書等の配布と取りまとめ、その他市長が必要と認める事項が定められている。
同条例第5条は、住民が民主的な方法で選考した者を市長が区長として委嘱し、区長が行政区を代表して所掌事務を統括することを定める。第7条は、公平な職務遂行と、退任後も含む秘密保持を求めている。[資料1]
このように、行政区と区長の基本的な位置付けは条例で示されている。ただし、条例上の行政区と、住民の自主的な組織である自治会の活動全体は、区別して考える必要がある。
しかし、現場の活動は、それだけではない。
行政から依頼される仕事、自治会が自主的に行う活動、各団体がそれぞれの役割で進める活動が重なり合っている。
その結果、区長がどこまで関与し、何に責任を持つべきなのか、判断に迷う場面も生まれる。
行政区としての仕事と、自治会が自主的に取り組む活動。その境界を、改めて整理する必要があるのではないだろうか。
区長の仕事を増やすためではない。
むしろ、役割と責任を明確にすることで、過度な負担を防ぎ、必要な活動に力を注げるようにするためである。
2.自治会は、地域の実態をどこまで把握できているのか
住民情報を基に活動方針を考えたかった
区長として、最ももどかしく感じたことの一つは、地域の基礎的な住民情報を十分に把握できなかったことだった。
行政からは、転入・転出に関する情報、空き家に関する資料、敬老行事などの対象者情報が、必要な事務に応じて提供されていた。
しかし、それらは個々の事務を進めるための情報であり、地域の状況や変化を継続的に把握するために整理された情報とは限らなかった。
例えば、地域の高齢化について考える場合、全国の高齢化率を参考にすることはできる。
しかし、自分たちの町ではどうなのか。
高齢者だけの世帯は、どの程度あるのか。
今後、どのような交流活動や生活環境の整備が必要になるのか。
こうしたことを地域の実情に即して考えようとしても、判断材料は限られていた。
認可地縁団体の認可取得でも感じた情報の壁
私は区長時代、自治会の組織としての位置付けを明確にするため、認可地縁団体の認可取得に取り組んだ。
その過程で、住民の理解と協力を得ながら構成員に関する情報を整理する機会があった。
しかし、それによって地域全体の住民構成や年齢構成、世帯の状況を十分に把握できたわけではなかった。
認可地縁団体になることと、地域の実情を把握するための情報基盤を整えることは、別の問題なのである。
それでも、認可取得に取り組んだことには意味があった。
自治会の組織としての位置付けを住民に説明し、自治会の活動について理解を深めてもらう機会になったと感じている。
必要なのは、住民全員の個人情報ではない
ここで誤解してほしくないことがある。
私は、区長が住民一人ひとりの氏名、年齢、電話番号、健康状態などを、すべて把握すべきだと考えているわけではない。
個人情報には慎重な取扱いが必要である。
むしろ、自治会の現在の管理体制を考えれば、安易に情報を集めることは危険である。
しかし、地域の人口構成や世帯構成、生活環境、施設の状況など、個人を特定しない適切な情報があれば、自治会の課題形成は変わる可能性がある。
地域の状況を知るために必要な情報と、個人を特定する情報は、分けて考えなければならない。
なお、少人数の地域では集計情報から個人が推測される場合もあるため、提供する情報の細かさには配慮が必要である。
3.紙による情報提供を、このまま続けてよいのか
紙の資料が中心となる行政からの情報
私が区長として経験した事務では、行政から提供される資料は紙が中心だった。
個人情報を含む資料については、取扱いに関する確認を行い、事業終了後に返却するという運用もあった。
こうした対応が必要になる理由は理解できる。
自治会の情報管理体制が十分に整っていない状況で、個人情報を電子データとして安易に提供することは危険だからである。
しかし、ここで一つの疑問が生まれる。
紙の資料を返却すれば、情報管理の問題は解決するのだろうか。
自治会のパソコンに残る情報はどう管理されるのか
自治会の事務では、パソコンで資料を作成し、名簿や活動記録を保存することがある。
それらのデータは、誰が管理しているのか。
どこに保存されているのか。
区長や役員が交代したとき、どのように引き継ぐのか。
不要になった情報は、適切に削除されているのか。
こうした基本的な管理の仕組みを、自治会として整えていく必要がある。
個人情報保護委員会の手引きは、会員名簿などの個人情報データベースを活動に利用する自治会も、個人情報保護法の対象になると説明している。利用目的を具体的に伝え、目的に必要な範囲で取得・利用し、配布などの第三者提供は原則として本人の同意を得る。保管・廃棄のルールを決めることも必要である。[資料2]
紙かデータかではなく、管理の仕組みが問題である
紙には、紛失や誤配布の危険がある。
電子データには、不正アクセスや誤送信などの危険がある。
どちらにも適切な管理が必要である。
だからこそ、紙の提供を続けるだけでなく、自治会の情報管理体制そのものを改善することが重要だと思う。
行政が自治会に事務を依頼するのであれば、必要な情報の安全な管理方法についても、自治会と協力して検討してほしい。
情報を保護することと、必要な情報を有効に活用すること。この二つを両立させる仕組みが求められている。
4.地域の情報を、担当者個人の中に埋もれさせない
地域には、多くの活動情報が存在している
地域には、民生委員、防犯関係者、青少年育成関係者、生涯学習関係者、環境指導員など、さまざまな役割を担う人々がいる。
それぞれが行政の担当部署と関わりながら、地域のために活動している。
しかし、それらの活動内容や地域課題が、自治会全体で十分に共有されているとは限らない。
区長が個々の役員から話を聞かなければ、地域全体の状況を把握できないこともある。
役員が交代すれば、それまでの経験や問題意識が十分に引き継がれない場合もある。
共有すべき情報と、共有してはいけない情報
ここで大切なのは、情報を何でも一元管理すればよいわけではないということである。
例えば、民生委員が職務上知り得た個人の相談内容などは、一般の自治会活動の情報とは区別しなければならない。
一方、個人情報を含まない活動実績、地域全体の課題、改善の記録などは、適切な範囲で共有できる余地がある。
防犯活動で把握した地域の課題。
環境美化活動で継続的に対応している問題。
住民から寄せられた要望のうち、地域共通の課題として整理できるもの。
こうした情報を組織として蓄積できれば、区長や役員が交代しても、課題への取り組みを継続しやすくなる。
情報を一か所に集めることより、必要な情報が必要な人に届き、次の活動に引き継がれる仕組みが重要なのである。
5.認可地縁団体として、自治会の組織運営を考える
自治会の自主性を保ちながら組織を整える
私は、自治会の組織としての位置付けを明確にしたいという思いから、認可地縁団体の認可取得に取り組んだ。
認可地縁団体は、地方自治法に基づき、一定の要件を満たした地域団体が法人格を取得できる制度である。
この認可は、自治会を行政組織の一部にするものではない。
地方自治法第260条の2に基づく認可は、自治会の自主性を保ちながら、法人として活動する基盤を整えるものである。[資料3]
不動産の保有を前提としない制度へ
2021年11月26日施行の改正により、不動産を保有する予定がなくても、地域的な共同活動を円滑に行うために認可を受けられるようになった。[資料5]
ただし、法人格の取得によって、行政の住民情報を自由に取得・閲覧できる権限が生まれるわけではない。構成員の名簿と、その区域に暮らす住民全員の情報も同じものではない。
法人格を得ても、運営上の課題は残る
組織としての位置付けが明確になっても、それだけで自治会運営の問題が解決するわけではない。
会員情報の管理。
役員の役割分担。
行政から依頼される事務の取扱い。
年間活動の計画と評価。
区長交代時の引き継ぎ。
こうした基本的な運営体制は、引き続き自治会自身が整えていかなければならない。
そして、自治会が地域の課題を把握するための情報については、行政との新しい協力のあり方も考える必要がある。
認可地縁団体への移行は、その問題を改めて考える一つの契機になった。
6.行政が保有する地域情報を、安全に利用できないだろうか
公民館などを活用した情報閲覧の仕組み
私は、一つの可能性として、行政が管理する地域情報を、公民館などの公共施設で安全に閲覧できる仕組みを考えている。
例えば、行政が地域ごとの人口・世帯構成、公開可能な防災情報、地域施設、行政事業などの情報を整理する。
区長や必要な担当役員は、認められた範囲の情報を閲覧し、地域の活動計画を検討する。
行政が保有するすべての情報を自治会に渡す必要はない。
必要な情報を、必要なときに、適切な権限に基づいて利用できる仕組みを考えるのである。
閲覧の安全性をどう確保するか
公民館などに指定端末を設ける方式も考えられる。
ただし、そのためには、利用者の認証、閲覧範囲の設定、利用履歴の記録、データの持ち出し制限などが必要になる。
また、公民館に新たな管理業務を担わせることが適切かどうかについても、検討しなければならない。
個人情報を含む資料は、安全な端末を用意するだけで閲覧できるものではない。閲覧による提供についても、行政が法令上の根拠、利用目的、提供の必要性と範囲を個別に確認する必要がある。個人情報保護委員会は、敬老会等の対象者名簿の提供について、利用目的を特定して行う場合と、目的外提供の要件を検討する場合を区別して説明している。[資料6]
これは、すぐに実施できると断言できる仕組みではない。
しかし、今後の自治会DXにおいて検討する価値のある方向ではないだろうか。
まずは公開可能な情報から始める
最初から大規模なシステムを導入する必要はない。
公開可能な地域統計を電子データで提供する。
自治会が利用できる行政資料の一覧を整備する。
自治会の事務に必要な資料を、共通の形式で提供する。
そうした小さな改善から始めることもできる。
明石市の公式ページでは、2026年7月から、全自治会を対象に、従来の紙文書の郵送に加えてPDF等で市の回覧文書を提供すると案内している。[資料4]
同市は、自治会の回覧デジタル化に関する事例集も公開している。行政側が資料をデータで用意することは、自治会での再入力やスキャンの負担を減らす手がかりになる。
電子回覧板の実証からも学ぶ
新宿区も、町会活動での電子回覧板アプリ活用について実証実験の取り組みを公表している。迅速な情報伝達や、新たな層の参加につながる可能性を検討する事例である。[資料7]
これらは住民個人情報の共有やAI活用の効果を証明する事例ではない。私が参考にしたいのは、身近な情報伝達から改善を試すという進め方である。導入時には、紙や電話も必要に応じて併用し、デジタル機器に不慣れな住民にも情報が届くようにしたい。
自治会が大量の住民個人情報を持たなくても、地域の実態を把握できる情報環境を整えること。
私は、これを自治会DXの重要な検討課題として提案したい。
7.AIを活用すれば、自治会の仕事はどう変わるのか
区長一人に依存しない組織運営へ
自治会の仕事は、区長や一部の役員に集中しやすい。
年間事業の計画、行政との連絡、会議資料の作成、住民への案内、活動記録、課題の整理など、仕事は幅広い。
経験豊富な区長であれば、過去の知識を生かして対応できるだろう。
しかし、初めて区長になった人が、同じように対応できるとは限らない。
組織運営の経験やパソコンの操作能力にも違いがある。
私は、自治会の活動が区長個人の経験や能力に大きく左右される状態を、改善する必要があると考えている。
AIで支援できる仕事
例えば、自治会の規約、年間活動計画、過去の議事録、行政の公開資料、個人情報を含まない活動記録などを整理する。
それらを基にAIを活用すれば、次のような仕事を支援できる。
- 会議資料や住民向け案内文の作成
- 年間行事の準備や担当業務の整理
- 過去の活動内容と改善事項の確認
- 地域課題の整理と改善案の比較
- 新任区長への業務説明や引き継ぎ支援
例えば、自治会の年間活動計画をAIに読み込ませ、前年の活動報告と比較しながら、負担の大きい仕事や改善の余地がある仕事を整理することも考えられる。
ただし、AIに入力する資料は、利用を認められたものに限る必要がある。
住民の氏名、電話番号、介護状況などの情報を、一般的なAIサービスに安易に入力してはいけない。
自治会の情報を組織として残す
私が特に期待したいのは、AIを単なる文書作成の道具で終わらせないことである。
自治会の活動記録や課題を継続的に整理し、必要な情報を新しい区長や役員が確認できるようにする。
そのうえでAIが、活動の経緯を要約したり、過去の改善案を整理したりする。
こうした仕組みが整えば、区長が交代するたびに、仕事を一から覚え直す負担を減らせる可能性がある。
AIの出力には誤りや見落としがあり得る。日付、金額、制度の説明などは原資料で確認し、活動方針は規約や総会・役員会の手続に沿って住民自身が決める必要がある。
ただし、実際に導入する場合は、利用するサービスの契約条件、情報の保存場所、アクセス権限、費用などを確認しなければならない。
AIによって区長の仕事を増やすのではなく、組織として仕事を分担し、継続できるようにすることが大切である。
8.年間行事をこなす自治会から、地域課題を考える自治会へ
行事は大切だが、それだけでよいのだろうか
自治会の年間活動には、運動会、祭り、敬老行事、環境美化、健康づくりなど、さまざまな行事がある。
いずれも地域社会にとって大切な活動である。
特に高齢化が進む地域では、人と人とが顔を合わせる機会を維持することは重要だ。
しかし、区長としての活動を振り返ると、年間行事の運営だけで、役員の多くの時間と労力が費やされていたように思う。
一つの行事が終われば、次の行事の準備が始まる。
こうして一年が過ぎていく。
予定された行事を無事に終えることは、もちろん成果である。
しかし、私は次のことも考える必要があると思う。
「今年も行事が無事に終わった」だけでなく、「今年、私たちの地域は何がよくなったのか」と振り返ることができないだろうか。
住民の希望を知ることから始める
地域の人々が何に困っているのか。
これまでの行事に参加していない住民は、どのような活動を望んでいるのか。
住民の年齢構成や生活の変化に、現在の活動は対応できているのか。
こうした問いを持つことも、自治会には必要ではないだろうか。
例えば、住民アンケートを行い、自治会活動に対する希望を把握する。
結果を適切に集計し、AIも利用しながら課題を検討する。
役員会で改善案を話し合い、実行可能な活動から取り組む。
そして、その結果を振り返り、次年度につなげる。
こうした積み重ねによって、自治会は年間行事を実施するだけでなく、地域の課題を考える組織へ変わっていけるのではないだろうか。
自治会に新しい負担を押し付けない
ただし、自治会が地域のすべての問題を解決する必要はない。
行政が担うべき仕事、専門機関につなぐべき仕事、自治会が自主的に取り組む仕事を区別することが重要である。
新しい活動を始めるなら、従来の活動の見直しも必要になる。
自治会DXが、区長や役員の仕事を増やすだけの改革になってはいけない。
限られた人材と時間を、地域にとって本当に必要な活動に生かすことが目的なのである。
9.行政と自治会に、今こそ考えてほしいこと
行政も自治会の運営実態に目を向けてほしい
私は、自治会の運営をすべて行政が管理すべきだとは考えていない。
自治会は、あくまでも住民の自主的な組織である。
その自主性は、今後も尊重されなければならない。
しかし、行政が自治会にさまざまな仕事を依頼し、地域活動への協力を求めている以上、自治会の事務負担や情報管理の現状にも関心を向ける必要があるのではないだろうか。
行政が何を依頼しているのか。
自治会は、それをどのような体制で担っているのか。
必要な情報は、適切な方法で提供されているのか。
役員交代時に、仕事や情報が確実に引き継がれる仕組みはあるのか。
こうした実態を、行政と自治会が一緒に確認することから始めたい。
改善に向けた5つの提言
私は、AI時代の自治会運営に向けて、次の5つを提案したい。
提言1|区長と自治会の役割・責任・守備範囲を整理する
行政から依頼される事務、自主的な地域活動、各種団体の活動を整理し、役割と責任を明確にする。
提言2|自治会の事務と情報管理の実態を把握する
どのような情報を扱い、誰が管理し、どのように引き継いでいるのか。現状を確認し、改善課題を明らかにする。
提言3|行政からの情報提供のあり方を見直す
紙による提供だけでなく、公開可能な地域情報の電子化、集計情報の提供、安全な閲覧方法などを検討する。
提言4|区長個人に依存しない運営体制を整える
活動記録や課題を組織として管理し、区長や役員が交代しても継続できる仕組みをつくる。
提言5|AIを活用した小規模な実践を始める
個人情報を扱わない文書作成や活動計画の検討などから始め、効果と課題を確認しながら段階的に進める。
行政と自治会が協議することから始めたい
これらの提言には、現行制度の運用改善によって対応できるものもあれば、制度や組織体制の見直しが必要になるものもあるだろう。
具体的に何が可能なのかは、行政の担当部署と自治会が実務を確認しながら検討する必要がある。
私は、すべてを一度に改革してほしいと求めているのではない。
まず自治会の実態を知り、現在の仕事の進め方を見直すことから始めてほしいのである。
おわりに|これからの自治会マネジメントを考えるために
3年間の区長経験を通じて、私は自治会活動の大切さと難しさの両方を感じてきた。
地域のために活動する役員の努力。
行事を通じて生まれる住民同士の交流。
行政や各活動団体との協力。
これらは、今後も地域社会を支える大切な基盤である。
しかし、少子高齢化が進み、地域社会のあり方が変化するなかで、従来と同じ活動を続けるだけで十分なのか、改めて考える必要があると思う。
AI時代だからこそ、仕事の原点に立ち返る
私は、自治会DXを、単に電子回覧板を導入したり、AIで文章を作成したりすることだけにとどめたくない。
自治会の仕事を見直す。
区長の役割と責任を明確にする。
地域の課題を考えるための情報を、安全に利用できるようにする。
区長や一部の役員だけに負担が集中しない運営体制を整える。
そして、住民の意見をもとに、自ら活動を考える組織へと変わっていく。
そのための手段としてAIを活用するのであれば、自治会DXには大きな意義があると思う。
全国の自治会関係者の皆さんへ
今回の記事は、私自身の3年間の区長経験を振り返りながら、自治会運営の現状と今後の可能性について考えたものである。
地域によって制度や運営の実情は異なるだろう。
しかし、少子高齢化が進む日本において、地域の人々が支え合う自治会の役割は、今後ますます重要になると考えている。
その一方で、区長や役員の負担を増やすだけでは、自治会の活動を持続させることは難しい。
行政と自治会がそれぞれの役割を尊重し、必要な情報を安全に活用しながら、地域の課題を共有できる仕組みを考える必要がある。
自治会DXの出発点は、AIを導入することではない。自治会の実態を把握し、その役割、責任、情報のあり方、仕事の進め方を見直すことである。
ささやかな経験ではあるが、この記事が、各地の区長や自治会役員、行政関係者の皆さんにとって、これからの自治会マネジメントを考える一つのヒントになれば幸いである。
資料・出典
確認日:2026年10月19日。以下はすべて公的機関の公式資料。体験談や筆者の提案そのものの裏付けを意味するものではない。
- 伊勢崎市行政区条例 — 第4条(所掌事務)、第5条(区長の委嘱・職務)、第7条(責務)。
- 個人情報保護委員会「自治会・同窓会等向け 会員名簿を作るときの注意事項」 — 自治会への法適用、利用目的、第三者提供、管理方法。
- 佐賀市「認可地縁団体について」 — 法人格、認可要件、行政組織の一部ではないこと。
- 明石市「自治会回覧デジタル化事例集」 — 回覧のデジタル化事例集と、2026年7月からのPDF等による提供の案内。
- 諫早市「認可地縁団体制度」 — 2021年11月26日施行の不動産保有要件見直し。
- 個人情報保護委員会「行政機関等編Q&A Q3-3-8」 — 敬老会等のために自治体から自治会代表者へ名簿を提供する場合の考え方。
- 新宿区「町会活動における電子回覧板アプリ活用の実証実験について」 — 町会活動でのデジタル活用の取り組み。

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