――個人・企業・業種別の調査データから見える普及の実態と課題
生成AIは、私たちの仕事や暮らしの中に急速に広がっています。
ChatGPTなどを利用して文章を作成する、情報を調べる、仕事のアイデアを考える。こうした使い方も、次第に身近なものになってきました。
企業でも、生成AIの導入や業務への活用が進んでいます。
しかし、ここで一つの疑問が生まれます。
生成AIを使う人が増えたことは、私たちの仕事や生活が実際に変わり始めたことを意味するのでしょうか。
また、どのような業種で活用が進み、どのような課題が残されているのでしょうか。
今回は、総務省の「令和8年版情報通信白書」、パーソル総合研究所の「生成AIとはたらき方に関する実態調査」、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2026」をもとに、日本の生成AI活用の現在地を考えます。
個人の利用状況、企業の導入状況、業種による違い、そして実際の業務への効果を整理し、最後にOGURA AI Labとしての考察を加えます。
1.日本の生成AI利用経験率は58.8%に
まず、個人の利用状況を見てみましょう。
総務省の「令和8年版情報通信白書」によると、日本で生成AIサービスを利用した経験のある人の割合は、2025年度調査で58.8%となりました。
2023年度は9.1%、2024年度は26.7%でした。
短期間で利用経験者が大幅に増加したことがわかります。
ただし、数値を比較する際には注意が必要です。
2023年度と2024年度の調査対象は20歳以上でしたが、2025年度調査では15~19歳が追加されました。
2025年度の結果を20歳以上に限定すると、利用経験率は52.2%です。
同じ年齢条件で比較しても利用経験率は大きく上昇していますが、調査対象の変更は理解しておく必要があります。

ここで、もう一つ注意したいことがあります。
58.8%という数字は、生成AIを日常的に利用している人の割合ではありません。
一度でも利用した経験がある人を含んでいます。
生成AIを試したことがある人と、継続的に仕事や生活で活用している人とでは、利用の内容も経験も異なります。
生成AIが普及していることと、生成AIの活用が定着していることは、必ずしも同じではないのです。
2.仕事で生成AIを使っている人は32.4%
次に、働く人の利用状況を見てみます。
パーソル総合研究所が2026年2月に公表した「生成AIとはたらき方に関する実態調査」によると、全国の就業者のうち、生成AIを業務で利用している人の割合は32.4%でした。
この割合から、生成AIの業務利用人口は約1,840万人と推計されています。
一方、週4日以上利用する人の割合は11.7%でした。
この調査は、全国の就業者19,855人を対象としたスクリーニング調査を含むもので、2025年10月に実施されています。
ここで、前章の総務省調査と数字が異なることに気づくかもしれません。
総務省の58.8%は、個人の生成AI利用経験率です。
一方、パーソル総合研究所の32.4%は、就業者の業務での利用割合です。
調査対象も設問も異なるため、二つの数字を直接比較することはできません。
しかし、パーソル総合研究所の調査からは、働く人の間でも、生成AIを頻繁に利用する層はまだ限られていることがわかります。
利用経験を増やすことだけでなく、実際の仕事に役立つ使い方を見つけ、継続して活用することが次の課題になるのではないでしょうか。
3.業種別に見ると、生成AIの利用には大きな違いがある
今回、特に注目したいのが業種別の生成AI利用状況です。
パーソル総合研究所の調査では、生成AIを業務で利用している人の割合を、業種別に比較しています。
情報通信業は61.3%と最も高く、学術研究・専門・技術サービス業、金融業・保険業などが続きます。
一方、製造業は35.3%、運輸業・郵便業は24.0%、卸売業・小売業は23.1%、医療・介護・福祉は22.1%、宿泊業・飲食サービス業は19.0%となっています。
業種によって、利用割合に大きな違いがあることがわかります。

出典:パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2026年2月3日公表)
情報通信業では利用が進んでいる
情報通信業の利用割合は61.3%でした。
情報システムの開発や運用、プログラミング、技術情報の整理など、生成AIを活用できる業務が多いことが、背景の一つとして考えられます。
ただし、今回の利用割合だけから、その理由を断定することはできません。
製造業では、さまざまな業務への活用が考えられる
製造業の利用割合は35.3%です。
製造業には、研究開発、設計、生産技術、品質管理、営業、管理部門など、多様な仕事があります。
例えば、技術資料の整理、作業手順書の下書き、過去の不具合情報の検索支援、業務改善案の検討など、生成AIが役立つ可能性のある場面は少なくありません。
もちろん、これらは活用例であり、今回の調査でそれぞれの業務の導入率や効果が実証されたという意味ではありません。
また、品質や安全に関わる業務では、AIが出力した内容を人間が検証することが不可欠です。
利用率が低い業種にも活用の可能性はある
医療・介護・福祉や宿泊業・飲食サービス業などでは、情報通信業に比べて利用割合が低くなっています。
しかし、利用割合が低いからといって、その業種が遅れていると単純に判断することはできません。
仕事の内容や、AIを利用できる場面が異なるからです。
人と直接接する仕事や、現場での判断が重要な仕事では、生成AIの利用方法を慎重に考える必要があります。
その一方で、記録の整理、案内文の作成、事務処理の支援など、活用を検討できる場面もあるでしょう。
大切なのは、他の業種の導入率を追いかけることではありません。
それぞれの仕事の特性に合わせて、生成AIをどのように役立てるかを考えることです。
4.企業の生成AI活用方針も広がっている
総務省の「令和8年版情報通信白書」によると、日本企業のうち、生成AIを積極的に活用する、または活用領域を限定して利用する方針を持つ割合は68.9%でした。
前年度の49.7%から上昇しています。
企業規模別に見ると、大企業では74.0%、中小企業では58.1%となっています。
企業規模によって差はありますが、中小企業でも活用を進めようとする動きが見られます。
しかし、ここで考えたいのは、活用方針を持つことと、実際に活用することの違いです。
企業としてAIを利用する方針を示していても、現場でどのように使われているかは別の問題です。
また、特定の部署で利用が進んでいても、その成果が組織全体に広がっているとは限りません。
企業の生成AI活用を考える際には、単に導入の有無を見るのではなく、どの仕事で、どのような成果につながっているのかを確認する必要があります。
5.AIで作業時間は短縮された。しかし仕事全体はどうなったのか
生成AIの効果について、興味深い調査結果があります。
パーソル総合研究所の調査によると、生成AIを利用した業務タスクでは、所要時間が平均16.7%削減されていました。
一方、実際に業務時間が減少した生成AI利用者は25.4%でした。
さらに、削減された時間の61.2%は、再び仕事に使われていました。

これらは、それぞれ測定対象の異なる数値です。
16.7%は、生成AIを使った作業の所要時間の削減率です。
25.4%は、実際に業務時間が減った利用者の割合です。
61.2%は、削減できた時間のうち、仕事に再び使われた時間の割合です。
この違いを踏まえて考えると、重要なことが見えてきます。
生成AIを使えば、一つの作業を短時間で終わらせることができます。
しかし、その分だけ一日の仕事が早く終わるとは限りません。
例えば、資料作成にかかる時間が短縮されても、その時間を別の資料の作成や日常業務に使えば、仕事全体の時間は変わらない可能性があります。
もちろん、削減された時間を別の仕事に使うことが悪いわけではありません。
これまでできなかった仕事に取り組んだり、仕事の質を高めたりすることができれば、十分な価値があります。
問題は、生まれた時間を何に使うかということです。
生成AIによって作業を速くするだけでなく、その成果を仕事全体の改善にどうつなげるか。
ここが、今後のAI活用の重要な課題になると考えます。
6.AI導入の次に問われるのは、仕事の変革
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2026年7月に「DX動向2026」を公表しました。
この報告書では、日本企業のDXへの取り組みと成果、AIの活用状況、組織体制、人材育成などについて分析しています。
AIの導入が広がる一方で、業務効率化にとどまらず、組織やビジネスの変革へどのようにつなげるかが重要な論点となっています。
私は、この問題が今回紹介してきた調査結果と深く関係していると考えます。
例えば、生成AIを利用して報告書の作成時間を短縮したとします。
これは業務の効率化です。
さらに一歩進んで、その報告書は何のために必要なのか、誰がどのような判断に使うのか、もっと良い情報共有の方法はないのかを考えることができれば、仕事の進め方そのものを見直すことにつながります。
AIを導入することと、AIを前提に仕事の仕組みを見直すことは同じではありません。
これからは、生成AIを利用する人や企業の数だけでなく、仕事の内容や成果にどのような変化が生じているかを見る必要があるでしょう。
7.OGURA AI Labの考察――AI普及率の先にあるもの
今回の調査から、日本では生成AIの利用が急速に広がっていることが確認できました。
その一方で、利用の頻度、業種による違い、業務全体への効果など、さまざまな課題も見えてきました。
私は、これらの結果を見ながら、かつて企業の経営管理や業務改善に携わっていたころのことを思い出しました。
仕事の改善では、一つひとつの作業を効率化することも重要です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
仕事の目的を明確にし、作業の流れを整理し、組織全体としてどのような成果を生み出すのかを考える必要があります。
この基本的な考え方は、生成AIの活用にも当てはまると思います。
現在、OGURA AI Labでは、ブログ記事の制作や情報発信、メール配信に関わる作業の一部に生成AIを活用し、自動化にも取り組んでいます。
その過程で感じているのは、AIを使うこと自体よりも、何を目的として利用するのかを明確にすることの重要性です。
私は、生成AIの活用には、大きく三つの段階があると考えています。
第一段階:AIを知り、使ってみる
生成AIの機能を知り、文章作成や情報整理など、身近な作業で利用してみる段階です。
ここでは、AIの基本操作や利用上の注意点を理解することが重要です。
第二段階:AIを日常の仕事や生活に組み込む
自分の仕事や生活の中で役立つ場面を見つけ、継続して活用する段階です。
利用した結果を確認し、より良い使い方へ改善していくことが求められます。
第三段階:AIを前提に仕事や活動の進め方を見直す
従来の仕事の流れや役割を見直し、人間とAIがそれぞれの強みを生かせる仕組みを考える段階です。
この段階では、単なる作業の効率化だけでなく、仕事全体の成果を高めることが重要になります。
これは、私自身の実践経験から整理した考え方であり、今回紹介した調査における公式の分類ではありません。
しかし、日本の生成AI活用の現在地を考える一つの視点になると思います。
利用経験者が増えることは、普及の第一歩です。
そこから継続的な活用へ進み、さらに仕事や活動の進め方を見直すところまで発展できるか。
それが、これからの生成AI活用で問われることではないでしょうか。
おわりに――「使えるようになった」の次に何を目指すのか
今回の調査から、日本の生成AI利用が急速に広がっていることがわかりました。
一方で、業種による違いや、継続利用の状況、業務全体への効果など、課題も残されています。
生成AIを導入することは、決して最終目的ではありません。
大切なのは、その技術を使って、これまでの仕事や暮らしをどのように良くしていくかということです。
生成AIによって仕事の成果はどう変わったのか。
人間の考える力や判断力を、どのように生かせるようになったのか。
そして、組織や個人の活動に、どのような新しい価値を生み出せたのか。
これからは、こうした問いがますます重要になると思います。
「AIを使えるようになった」で終わらせず、「AIによって何が良くなったのか」を問い続ける。
OGURA AI Labでは、これからも調査データと実際の活用経験を結びつけながら、生成AIが仕事や暮らしにもたらす変化を考えていきたいと思います。
参考資料・出典
1.総務省「令和8年版情報通信白書」(2026年公表)
個人の生成AI利用経験率、企業の活用方針、企業規模別の利用状況など。
2.パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2026年2月3日公表)
業務での利用割合、業種別の利用状況、利用頻度、作業時間の削減効果など。
3.独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」(2026年7月30日公表)
日本企業のDX、AI導入、業務変革、組織体制、人材育成の実態など。
※調査機関ごとに対象者、設問、集計方法が異なります。数値はそれぞれの調査条件に基づいて紹介しています。
※本文の考察部分は、公開された調査結果とOGURA AI Labでの実践経験を踏まえた独自の見解です。

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