公民館を地域DXの支援拠点にするという考え方
自治会の仕事を少しでも楽にしたい。
回覧文書を作りやすくしたい。
行事の準備を毎年ゼロから始めるのをやめたい。
過去の資料を整理して、次の役員へきちんと引き継ぎたい。
生成AIやGoogleドライブなどを使えば、こうした自治会業務はかなり改善できるようになってきました。
しかし、実際に自治会DXを進めようとすると、一つの大きな壁にぶつかります。
それは、
自治会だけの努力では、DXを継続することが難しい
という問題です。
今回は、自治会DXを一部の熱心な区長や役員だけの取り組みに終わらせず、地域全体の仕組みにしていくために、
「行政―公民館―自治会」
の三者をつなぐ仕組みについて考えます。
なぜ自治会だけではDXが進みにくいのか
自治会は企業とは違います。
多くの場合、区長や役員は毎年、あるいは数年ごとに交代します。
そのため、ある区長が熱心にパソコンを使い、資料を整理し、AIを活用して業務改善を進めても、その人が交代すると元のやり方に戻ってしまうことがあります。
たとえば、
・去年の行事資料がどこにあるのか分からない
・案内文を毎年一から作っている
・役員によってExcelの形式が違う
・引き継ぎが口頭中心になっている
・過去の反省点が翌年に生かされない
といったことは珍しくありません。
これは個々の区長や役員の能力の問題ではありません。
自治会そのものに、
業務改善を継続する仕組みがない
ことが大きな原因です。
DXとは「デジタル機器を使うこと」ではない
自治会DXというと、
「LINEを使う」
「紙をPDFにする」
「パソコンを導入する」
と考えられがちです。
もちろん、これらもデジタル化の一部です。
しかし、本当に重要なのはその先です。
自治会DXの目的は、
自治会の仕事を整理し、誰が担当しても一定の質で続けられる仕組みを作ること
にあります。
たとえば、
・毎年使う文書をテンプレート化する
・行事ごとの計画書を残す
・反省点や改善点を翌年度に引き継ぐ
・予算、決算資料を年度比較できるようにする
・資料の保存場所を統一する
・過去資料を検索しやすくする
こうした仕組みづくりこそが自治会DXです。
生成AIは、そのための非常に便利な道具になります。
そこで重要になる「公民館」の役割
自治会ごとに、
「DXをしてください」
「AIを使ってください」
と言うだけでは、なかなか広がりません。
ITが得意な区長もいれば、苦手な区長もいます。
パソコン環境が整っている自治会もあれば、そうでない自治会もあります。
そこで重要になるのが、公民館です。
地域の自治会と日常的に関わっている公民館が、
地域DXの実務支援拠点
という役割を持つことができれば、状況は大きく変わります。
公民館ができる5つの支援
1.自治会DXの方向性を示す
最初に必要なのは、高度なシステムではありません。
「自治会事務を少し楽にしましょう」
「毎年使う資料を整理しましょう」
という共通の方向性です。
公民館がこの方針を示すだけでも、各自治会は取り組みやすくなります。
2.共通して使える資料を整える
各自治会が同じような文書を毎年一から作る必要はありません。
たとえば、
・回覧文書
・行事計画書
・役員会議事録
・自治会加入案内
・住民アンケート
・引き継ぎ書
など、共通化できるものはたくさんあります。
公民館が基本となるひな形を用意し、それぞれの自治会が必要に応じて変更する。
それだけでも、かなりの負担軽減になります。
3.AIの「使える実例」を見せる
AI研修で難しい理論を説明する必要はありません。
たとえば、
「昨年の敬老会案内を今年の日程に変更して、分かりやすい回覧文にしてください」
と生成AIに依頼し、数十秒で案内文ができるところを見てもらう。
あるいは、
「昨年の行事の反省点から、今年の改善項目を整理してください」
と依頼する。
こうした具体例を見ることで、
「AIというもの」から「自治会で使える道具」
へ認識が変わります。
4.区長・役員向けの短い実務研修を行う
1回2時間、3時間という研修でなくてもよいと思います。
たとえば30分から1時間で、
・ChatGPTで回覧文を作る
・Googleドライブに資料を整理する
・Googleフォームでアンケートを作る
・Excelで名簿を整理する
といった一つのテーマだけを学びます。
小さく学び、すぐ実際の自治会業務で使う。
この繰り返しの方がDXは定着します。
5.自治会の「困っている仕事」を一緒に探す
DXは、ツールから考えるとうまくいきません。
最初に聞くべきなのは、
「自治会で一番時間のかかっている仕事は何ですか?」
という質問です。
たとえば、
「毎年、作品展の案内を作るのが大変」
なら、そこから始めればいい。
「引き継ぎが大変」
なら、引き継ぎ書の標準化から始めればいい。
「アンケート集計が大変」
なら、GoogleフォームとAIを試してみる。
困りごとからDXを始める。
これが重要です。
行政・公民館・自治会の役割を分ける
自治会DXを継続させるには、役割分担も必要です。
イメージすると、次のようになります。
行政
↓
方針・制度・安全管理・支援体制を整える
公民館
↓
研修・相談・共通資料・事例共有を行う
自治会
↓
実際の自治会業務の中で使い、改善する
行政が方向を示し、公民館が支援し、自治会が実践する。
私は、この三者の関係が自治会DXを進めるうえで非常に重要だと考えています。
いきなり全自治会で始める必要はない
ここでもう一つ重要なのは、
最初から大規模に始めないこと
です。
たとえば最初は、一つの自治会で試してみます。
対象業務も一つで構いません。
例として、
「行事案内文をAIで作ってみる」
ところから始めます。
うまくいけば、
「行事計画書」
「反省点整理」
「次年度引き継ぎ書」
へ広げます。
そこで成果が確認できたら、公民館を通じて別の自治会にも紹介します。
私は、
モデル自治会で試す
→成果を見る
→改善する
→他自治会へ広げる
という方法が現実的だと考えています。
自治会DXで忘れてはいけないこと
もちろん、注意しなければならない点もあります。
特に重要なのが個人情報です。
世帯名簿、高齢者情報、独居世帯、会費情報などを、何でもそのまま生成AIへ入力してよいわけではありません。
行政や公民館が、
「AIに入力してよい情報」
「入力してはいけない情報」
「どこにデータを保存するか」
といった基本的な考え方を示す必要があります。
また、スマートフォンやパソコンを使わない住民への配慮も欠かせません。
DXは紙をすべてなくすことではありません。
紙、対面、デジタルをうまく組み合わせながら進めることが大切です。
自治会DXは「人を減らすDX」ではない
自治会DXについて考えるとき、私は一つ大切にしたいことがあります。
それは、
人と人との関係を減らすためのDXではない
ということです。
自治会には、防災、防犯、福祉、環境美化、地域行事など、人と人とのつながりがなければできない仕事があります。
だからこそ、
文書作成
資料整理
集計
引き継ぎ
といった事務作業をAIやデジタルに任せ、人にしかできない活動に時間を使えるようにする。
それが自治会DXの本来の姿ではないでしょうか。
自治会だけにDXを背負わせない
自治会DXを考えるとき、
「区長がもっと勉強すればいい」
「若い役員を入れればいい」
だけでは問題は解決しません。
役員が交代しても続く仕組みが必要です。
そのためには、
行政が方向を示し、公民館が地域のDX支援拠点となり、自治会が実践する。
この連携が必要だと考えます。
自治会DXは、一部のITに詳しい人だけが進めるものではありません。
地域全体で少しずつ仕事の仕組みを改善し、その成果を次の世代へ引き継いでいく取り組みです。
その第一歩として、公民館の役割を改めて考えてみる価値があるのではないでしょうか。
実務で使える提案書モデル
今回の記事で紹介した考え方について、より詳しくまとめた提案書モデルを用意しました。
自治会、公民館、行政などで自治会DXについて検討するときの参考資料としてご利用いただけます。
添付資料:
「自治会DX・AI活用による業務改善の必要性と公民館の役割について
―自治会活動を持続可能にするための提案―」
内容:
・自治会DXが必要な背景
・生成AIによる自治会業務改善例
・資料整理と標準化
・公民館に期待される役割
・行政に期待される役割
・使用できるデジタルツール
・自治会AIアシスタント構想
・モデル自治会から始める5段階の導入方法
・個人情報など導入時の注意点
自治会DXを検討する際の「たたき台」として活用してください。
自治会DX研究室 提案資料
行政・公民館・自治会の三者連携による自治会DXの考え方と、生成AI・デジタル活用の具体例をまとめた提案資料です。自治会、公民館、行政で検討する際の参考資料・たたき台としてご活用ください。

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